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【スポキャリインタビュー vol.4】宮崎正志さん (大阪産業大学野球部監督)

2020年12月30日 23:15

スポキャリ

  • 【スポキャリインタビュー vol.4】宮崎正志さん (大阪産業大学野球部監督)

【スポキャリインタビュー vol.4】

学生のこと、就活のこと――
大学の指導者に聞いてみた

宮崎正志さん
(大阪産業大学野球部監督)

[聞き手]
岡 泰秀
(株)スポキャリ代表取締役会長。昭和50年(1975年)生まれ。京都成章高-大阪体育大。99年4月(株)大阪近鉄バファローズに入社。監督付き広報、2軍チームマネジャーほか、球団社長室に所属し、肖像権委員会、広報業務などに携わる。近鉄球団の整理を担当しながら、オリックスバファローズや東北楽天イーグルスの設立に携わり退社。09年にスポーツマネジメント会社「スポーツカンパニー」設立。上原浩治(元巨人)、建山義紀(元日本ハム)らの日本側の代理人を務め、清水直行(元ロッテ)らの事業コンサルを務めた。
04年よりプロスポーツ昭和50年会を立ち上げ、幹事長を務める。05年より大阪体育大学硬式野球部の助監督を務めた(~17年)。16年からは阪神大学野球連盟の常任理事。
20年より(株)スポキャリ取締役会長

自分の道は自分で切りひらく!敷かれたレールの上を走るだけではだめだ

宮崎正志さんは、阪神大学野球連盟の1部リーグに所属する大阪産業大学野球部で19年の長きにわたり監督・コーチを務めるかたわら、大学ではキャリアセンターの職員を務められ、「クラブ学生進路相談担当者」の肩書で、体育会学生の卒業後の進路について、向き合ってきた。

2020年シーズンは新型コロナウイルスの影響を受け、春季シーズンは中止。満を持して迎えた秋季シーズンだったが、開始直前3日前に、部員にコロナウイルス陽性者が出たため、大産大は第1節、第2節の辞退を余儀なくされた。

苦悩のシーズンを送ってきた大産大・宮崎監督は「それでも感染者がうちの大学の選手でよかった」と言い、その処理の過程にチームの、選手たちの成長を感じられたからだという。そんな例年とは異なる就活の現場、学生たちの成長を語ってもらった。

★成功は自分の存在・立場に気づけることから始まる

大阪産業大学のキャリアセンター職員として宮崎さんがまず感じられたのは、やはり新型コロナウイルスの影響の大きさ。実際にリモートでの就活が多くなってくると、どう動いていいのかわからないということもあったはずと、学生たちの不安が膨らんでいたことを案じた。

「それでも、基本自分から動くということを意識しないといけない。これは体育会の学生に限ったことではないのですが、“やってもらったから、やっている”という学生が多いんです。

きっかけはそれでもいいのですが、いつまでもそれを繰り返していてはダメ。自分から動いたら、自分はこうなっていくんだ、ということを自分で見つけられるようにならないといけないと思います」

野球界で育ってきた選手たちは、特に強豪校に進んだ学生に多い傾向があるのだが、小・中・高と野球を続ける中で、強い環境を求めて、とかく各々のタイミングで指導者や関係者、そして家族の敷いたレールの上を走るだけという学生が多いのだという。

「有望選手であればあるほど、みんな周りが動いてくれる。うまくなるため、強くなるため、高校であれば、甲子園に出るため、そんな理由で周りが動いて、みんな決めてくれる。選手のほうは、本当はその”レール”に乗っかっているだけやのに、“自分は頑張っている”んだという気分になってしまっている。

もしかしたら、周りの大人のほうに問題があるのかもしれないけれど、どちらにしてもそこに気づくのが遅れるから、就活にしても動き出すのが遅れる。そういう傾向がある」

入試制度の問題もあるのかもしれない。そもそも大学のスタートラインの違いがある。

「国公立の子って、やっぱり自分で勉強して進学している。そこでまず、自分で気づく、あるいは考えるということを経験している。一方、私学には、もちろん全部ではないですけれど、“推薦”という制度が存在していて、高校時代に野球で結果を残している選手たちはそこに行けてしまうという実態がある。考える必要もなく、野球を続けたいから、推薦で入れる大学に行く。そこには、大学に進んで将来どうしようという未来図はほぼない」

大学で野球をするだけでいいのだったら、それでもいいかもしれない。

宮崎さんは「人生は大学を出てからのほうが長い。僕ら学生の指導者は野球を強くするだけではなく、大学を出てからの人生を応援する立場でいないといけないと思っている」と力強く言った。

宮崎さんは「高校のときにみんな、そういう教育はうけているはずなんです。でも、高校のときは基本言われたことをやっているだけだから、気づいていない。それで大学に来る。自分のことは自分でやらなければという次のステージに上がっているんだけれど、それが、人から言われないから、”自分の好きにできる”と勘違いして、楽をしようとするヤツが出てくる。大学以降の成功は、ある意味ここが一つの“境い目”となるような気がしています」という。では、宮崎さんから見て、”間違っている”方向に進もうとしているように見える学生に対してはどのような対応をしているのだろう。

「直接、注意はしません。いきなりそこに話をもっていくと反発する学生も出てくる。ただ、見方を変えると、反発する学生もある意味見どころがあるというところもある。

それは、自分で、よくないことをわかっている、認めているからなんです。わかっているから反発する。それを指摘して、次はその反発するエネルギーをどこに向けるかという話になっていく」

ただ、のんべんだらりと過ごすことをよしとしない。今回のテーマである就活についても、それは同じ。宮崎さんは、これまでの経験から「就活のことをちゃんとできないヤツは、結局野球でもダメ、成長が見られないという学生が多い」と断言した。
「たとえば3年生は、春になると就活と春のリーグ戦(そこに向けての練習も含めて)のタイミングがぶつかることもよくあります。基本的には就活に行きたいというヤツにはいかせます。ただ、自分の意志でやるという学生に対しては、ですよ。

人が行くから行く、誘われたから行く、というのはダメです。そこでできなかった練習は、時間もあるし、自宅でもできることは多い。毎日続くわけでもないし、取り戻せます。それが自分で判断できない学生は、結局就活も中途半端、野球も中途半端に終わってしまう」

★就活に中途半端な学生は野球も中途半端

上記紹介したように、宮崎さんは大学ではキャリアセンターの職員として勤務されている。担当は「クラブ学生進路相談」ということだが、当然のように、野球部以外の学生や、体育会に属さない学生とのかかわりも多い。

「これはほかの大学とはシステムや置かれている環境も違うと思うので、うちの大学の話として聞いてほしいのですが、すごく違いを感じます。僕がいるからかもしれませんが、野球部の学生たちは、時間がある選手は、そういう呼びかけにも答えて、イベントなんかにもしっかり来ます。ほかのクラブに学生たちは、少々鈍い。

それは指導者にも言えることで、指導者を集めて意見交換会をしたことがあった。それがなかなか続かない。無関心な指導者もいて、残念に思うこともあります。個人的にはそういう指導者の下でやっているクラブは、やはりクラブとしての成績も上がっていないように思います」
キャリアセンターの職員としての立場で言うなら、そこが「すごく残念」と宮崎さんは忸怩たる思いを感じているようでもあった。

野球と就活。別々の問題のようで、決して別の問題ではなく、しっかりリンクしていると宮崎さんは言う。
「練習をちゃんとやっていても、就活を適当にやっていたら、どっちもうまくいかないぞといってやる。すると、”野球を一生懸命にやっているんです”という。

でも、見ていると、要所要所で、野球のほうでも中途半端なところが出てくるんです。結局、就活から逃げているヤツは野球でも逃げる。嫌なことから逃げるということは、好きなことも適当にやってしまうことが多い。好きか嫌いかではなく、結局、“嫌”も”好き”も、どっちも中途半端になるんです」

★コロナ禍にあって、学生たちの成長を感じられたこと

阪神大学野球連盟で最もコロナの影響を受けたのは大産大だった。秋リーグ開幕を前に部員にコロナ感染者が出て、開幕から2節の出場辞退を余儀なくされた。

「エエ格好して言うわけではないですが、コロナに感染したのが、うちの学生でよかったな、と。かかりたくてかかるヤツはいません。でも本人は、自分のせいで仲間が、試合に出られないということになって、責任を感じてしまいます。なんと声をかけていいか、迷っていました。

チームには“出られるようになったら一生懸命やろうな“といいました。しかし、本人に対しては、どういっても責任を感じているから、何の慰めにもならないのではないか、と。すると、僕が何もせんでも、主将・主務を始め、学生たちが自分の意志で連絡をとって、励ましていたんですね。

本人は救われた。チームの精神的な成長も感じられました」
常々、わかりやすいところではなく、わかりにくいところで成長してくれたらうれしいと言ってきた宮崎さんは、「それは人から評価されにくいところ、わかりにくいから誉められもしない。すごいなとも言われない。今回のコロナの中での一件は、そういうところの成長が感じられたので、よかったなと思いました」と、目を細めた。

さらに「野球で、“勝った負けた”だけでなく、それ以外の、それこそコロナ禍にあっての行動とか、今回のように就活イベントへの取り組みとか、本当に頑張ってほしいと思う。学生たちにとっては大学を卒業してからのほうが人生は長い。こういう就活というのは、そのこれからの人生に直結する話。僕らは、彼らの野球を応援するのではなく、それとともに人生を応援する、それが基本なんです」

阪神大学野球連盟の主催する就活イベントは今回が6回目。近年は全国の他のリーグでも同様のイベントを開催しているところはあるが、パイオニアになったということでいえば、阪神大学野球連盟のやってきたことの価値は非常に大きいものがある。
そのイベント開催にかかわってきたのが(株)スポキャリの岡会長をはじめ、宮崎さんら同リーグにかかわる多くの人たちだった。宮崎さんのいう、教え子たちの卒業後の人生に対する応援として、この活動をさらにアップデートして続けていこうということである。

◆就活のためのキーワード

1・就活に中途半端な学生は野球も結局中途半端
2・自分の進路は自分で考えて見つけよう
3・野球ではなく、それを含めた人生を応援している

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